森林資源管理と数理モデル
第二回シンポジウム
−FORMATH TOKYO 2002−
はしがき
FORMATH(Forest Resouces and Mathematical Modeling)研究会は、2001年3月、
名古屋大学でのシンポジウムを皮切りに発足した自発的な研究会で、「森林資源管理と数理モデル」に関わる研究の向上を図るため、研究者と実務者、
あるいは森林経営・管理に関心のある人々との意見交換の場を設定することを目的としている。
本論文集は、FORMATH研究会が2002年3月に主催した「森林資源管理と数理モデル第2回シンポジウム−FORMATH TOKYO 2002−」における発表論文をもとに編集したもので、
2001年3月の名古屋シンポジウム論文集に続くVol.2となるものである。
第2回シンポジウムでは、「森林資源管理と数理モデル」を共通のキーワードとし21世紀型森林資源管理を目指す生態、水土保全、炭素循環、経済など多様な分野からの研究発表が行われた。
その背景として、持続可能な森林経営における森林資源の意味するところは、従来の木材のみならず森林生態系が包含する野生生物、水、土壌、バイオマスなど拡がりを見せていることが挙げられる。
部門別に見てみると、「測樹モデル」部門では三重大学の松村氏、豊橋創造大学の稲田氏、広島県立林業技術センターの時光氏が、
「生態モデル」部門では琉球大学の萩原氏、九州大学の佐竹女史、地球フロンティア研究システムの久保氏、東京大学の笹川氏が、
「森林機能とモデリング」部門では東京大学の小松氏、九州大学の光田氏、森林総合研究所の佐野氏が、
「炭素モデルとモニタリング」部門ではすべて森林総合研究所の小野氏、松本氏、小谷氏、平田氏が、
「森林経済モデル」部門では東京大学の坂東女史、東京農業大学の田中女史、(財)地球環境戦略研究機関の立花氏、宮崎大学の行武氏、東京大学の広嶋、宮崎大学の藤掛氏がそれぞれ研究発表を行った。
本論文集にはこのうち時光氏、佐野氏、小野氏、坂東女史、田中女史、行武氏、広嶋、藤掛氏の論文が掲載されている。
時光氏はヒノキ単木の枝と葉の関係を分析し、見いだされた関係を樹幹形にまで適用することによりヒノキ単木の形状モデルを作成した。
佐野氏は定量的情報を目標計画法、定性的情報をランドスケープエコロジーの概念に基づくGISでそれぞれ分析することにより多様な森林機能を考慮した流域管理計画策定を可能とした。
小野氏は既往の実測データを利用し樹種・林齢などに基づく根現存量の推定式を求め樹木根系が貯留している炭素量を試算した。
坂東女史は既往研究および聞き取り調査による情報に基づき乾燥材生産工場のモデルを構築して経営分析を行った。
田中女史は日本における45年間の木材の部門別需要量と日本の経済指標との関係を分析し、木材流通概念モデルの構築を行った。
行武氏は世界10地域における30年間の木材の部門別年次データを計量経済学的に分析し林産物貿易モデルの構築を試みた。
広嶋は日本の木材需給均衡モデルへ拡張減反率を適用するための問題点を分析し、モデルの内生変数である丸太価格に基づく拡張減反率の推定方法を考察した。
藤掛氏は齢級構成表に基づくデータの打ち切り・切断を考慮した減反率の最尤推定法について、既存の推定法と比較しながら考察した。
本論文集に掲載された「森林資源管理と数理モデル」に関する論文は、分野横断的な概念・手法を含んでおり、多くの研究者の参考になるものと考える。
読者の方々にはこの論文集を傍らに置き、自身の研究において参照・活用されることを切望する次第である。
最後に、第2回シンポジウムの開催から本論文集の編集に至るまで様々な形でご協力いただいた統計数理研究所の吉本敦氏、森林総合研究所の福田未来女史、
同じく森林総合研究所の鹿又秀聡氏、森林総合研究所北海道支所の高橋正義氏、鳥取大学の井上昭夫氏、東京大学の箕輪光博氏に対しこの場を借りて心よりお礼を申し上げる。
平成15年2月14日
東京大学大学院
農学生命科学研究科
広嶋 卓也